2016年06月28日

盗難車

MYLENE FARMER / INTERSTELLAIRES (2015) フランス

フランスはおろか、もはや非英語圏での最大のスターとなってしまったミレーヌ・ファルメールの10作目最新作。
近年では最高の出来では。収録曲がどれもいい。壮大なライブステージが見えるかのような1・6、フレンチポップス然とした3・4・7、懐かしいチープトリックの曲をしっとりと聞かせる8、バケモノの扮したPVがあいかわらず秀逸な10など、すべてに無駄がなくあっという間に聞き終わってしまう。最近ではダンスおばさんと揶揄されてしまうけど、メロディも良く歌い手としての魅力が存分に発揮された収録曲ばかりだと思う。
2「STOLEN CAR」は、スティングとの素晴らしいデュエット作。もともとはスティングの2002年作の収録曲を、いかにもミレーヌらしい雰囲気のアレンジを施し、艶っぽく息のあった歌声を披露する。イギリスとフランスの大スターの2人。EU離脱問題に揺れる世界情勢の中で、音楽に国境はないのになぁと嘆いてしまう。

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2016年06月22日

プログレ製造工場

LA FABBRICA DELL'ASSOLUTO / 1984:l'ultimo uomo d'Europa (2015) イタリア

イタリアの新鋭プログレグループ、ラ・ファブリカ・デラソルートのデビュー作。バンド名は「絶対製造工場」という意味。ジョージ・オーウェルが1948年に発表した小説「1984」へのオマージュとなっている。
若手の新人バンドだが、まあなんとも古くさい。70年代のイタリアンロック最盛期にそのまま居ても、何の違和感のない懐かしい耳障り。ムーグ、メロトロン、ハモンドといった三種の神器は揃っているし、落ち着かないドタバタした雰囲気や、ドラマチックに盛り上がったりと、ムゼオやBigliettoi per l'infernoあたりの、いわゆるヘビーシンフォニックな要素が満載。本人たちは勿論この時代の音が好きなんだろうが、よく研究している気がする。
テーマも古い。70年代のバンドが取り上げそうな、核戦争後をテーマにしたSF小説だ。マインドコントロールされた統制社会に疑問を持つ登場人物たちの葛藤とやるせない顛末が、いかにも70年代的な音とよく合っている。
新鮮味はまったくないながらも、安心して聴いていられて満足度は高い。20年前、初めて聴いたイタリアンロックの感動と興奮を追体験できる本格的なビンテージサウンドだ。
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2016年06月21日

リスモのカーブ

LA CURVA DI LESMO / Same (2015) イタリア

AMS 2015/10
ファビオ・ズファンティと、ゼーノのステファーノ・アニーニのプロジェクト。60年代のゴシック&ホラーアニメに出てくるヴァレンティナなる女性へのオマージュ作品とのこと。ジェニー・ソレンティの他、ズファンティ側近やゼーノの面々が参加。
懐古趣味な印象的なジャケットのイメージ通り、60〜70年代のテイストがふんだんに散りばめられている。往年のイタリアンプログレで似たところを探すと、セミラミスやブロンゾやムゼオあたりと音触りは似ているが、色気があって俗っぽいところが個性であり現代的といえるか。
長尺の全3曲。1曲目はビデオクリップも作られているが、エロ&ホラー。2曲目3曲目も、男性ボーカルも交えてドラマチックで場面展開がせわしなく緩急自在。バイオリンがふっと入ってきたりと、イタリアンロックの魅力が満載。傑作だと思う。
ちなみにバンド名の「リスモのカーブ」は実在するそうだ。

La Curva Di Lesmo - La Curva Di Lesmo
La Curva Di Lesmo - La Curva Di Lesmo



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2016年06月13日

エロスとプシュケ

HOSTSONATEN / SYMPHONY N.1 CUPID & PSYCHE (2016) イタリア

イタリアのワーカホリック鬼才、ファヴィオ・ズファンティの、バンド形態をとらずに好きなミュージシャンを贅沢に使ってシンフォニックロックを好きなようにやりますよプロジェクトの最新作。
テーマはローマ神話から。原題ではローマ神話の「キュピドとプシュケ」だけど、邦題ではギリシア神話の「エロスとプシュケ」。この違いはローマ神話がギリシア神話の翻訳だから。あらすじとしては、人間の娘プシュケと恋に堕ちた神様(キューピット)二人のお話。けしての神の顔を見てはならないという掟を破った人間プシュケが数々の試練を乗り越えて神の許しを得てハッピーエンドになるというストーリーが交響曲で表現される。
前作ではボーカル入りでロックオペラとして表現されていたが、今作はオールインストにして、本物の管弦楽器が全面にフューチャーされている。とはいいつつも、エニドなどのような室内楽風ではなく、ドラムの叩き方や、泣きのギターソロや、キーボードが前面に出てくる場面も多く、あくまでロックの範疇のオーケストラの使用となっている。このあたりは今作より共同制作者となった、ゼーノのルカ・スケラーニのオーケストラアレンジの存在感とズファンティのシンフォニック&エキセントリックな面がバランス良く混ざって絶妙だ。
ホストソナテンは四季シリーズなどロック界に燦然と輝く傑作揃いだが、それらに匹敵する出来栄えだと思う。情景を音にする能力、イタリアらしい情感の豊かさなどにただただ感心。マスケラを脱退し、前作「老水夫の歌」の完成を先送りにしてまで完成させた本作。ズファンティの才能と表現力はとどまることを知らない。バレエ音楽としても劇場公開されるらしく、相当楽しみだ。


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2016年05月23日

PROGRESSIVE ROCK FES 2016

PROGRESSIVE ROCK FES 2016に行って参りました。
天気は快晴の5月の日比谷野音。最高でした。
席はB席1列目で、ちょうど前方のアーティストの前には警備の人しかいないという、ほぼ最前列。
毎回毎回、素晴らしい席を確保してくださり心の底から感謝です。

4時開演だったが10分早く、「吹けよ風、呼べよ嵐」の暴力的なフレーズが会場に鳴り響く。
ピンクフロイドのトリビュートバンド、原始神母。
目を閉じて聴くと、最早叶うことがなくなったピンクフロイド公演が広がる。こういう形でしかもはや体験することはできないんだなあと感傷的になるとともに、バンドの方々を含め会場の全体がピンクフロイドを好きなんだという一体感のようなものを感じた。
演奏はそれほどかっちりしてないものの、感覚的だった初期フロイドの雰囲気はこんなんだったんだろうなと感じることができた。
そしてコーラス隊の二人の女性がお綺麗。風が吹いてきて、深いスリップの入った黒いドレスがヒラヒラするたびに、目線はくぎ付けでした。しかも、ただのビジュアル担当かと思いきや、「タイム」のあとに、そのまま「虚空のスキャット」に突入して、オイオイもしかして歌うのか?と思ってたら、まあしっかりとした声量で歌い切るじゃありませんか。ミヲリさんとレイナさんの名前を覚えておこう。今思えば、この後はラクダ顔や馬面のおっさんばかり出てくるので、唯一華やかな一時でした。
クラブチッタで「狂気」全曲やりますと告知してたけど、東京に住んでたら行きたいなと思った。

そして次はスティーブ・ハケット登場。
ジェネシスそしてソロと、プログレ界を休むことなく牽引するギターヒーロー。
僕は96年の来日時に見てるので、20年ぶりの再会でした。
現在66歳だが20年前とまったく印象が変わらない。

1.Out Of The Body
2.Wolflight
3.Love Song To A Vampire
4.Loving Sea

もしかしたら最高傑作かもしれない最新作より。
ハケットを中心に鉄壁のテクニックで、演奏にまったくブレがない。
目をひいたのが、キルトのスカートを履いた元カジャグーグーのニック・ベックス。
3は、クリス・スクワイアがベースで参加してたんで、クリスの足真似をしてたのか。

5.A Tower Struck Down
6.Shadow Of The Hierophant

75年の初のソロ、侍祭の旅より。
おなじみのフレーズのリフレインに畳みかけられる。
スターシリウスと、エース・オブ・ワンズも見たかったな。

7.The Cinema Show
8.Aisle Of Plenty

以降はジェネシス曲にシフトチェンジ。
シンフォニック教の総本山、月影の騎士より。
地声も似てるんだろうけど、ナッド・シルヴァンのビーガブそっくりの声は、もはや名人芸だ。
キーボードの人も、バンクスの繊細なきめ細やかさを、しっかり再現できている。
ジェネシスのメンバーが再結集しても、もはやここまでの感動のある演奏ができるかどうか。

9.The Lamb Lies Down On Broadway

英国田園からニューヨークの下町へ。幻惑のブロードウェイより。
狂ったように聴き続けた高校生の頃。まさかこれを聴けるとはね。

10.Can-Utility And The Coastliners
フォックストロットより。
ウィッチャーオブザスカイやって欲しかったなんて思った僕は贅沢者。

11.Dance On A Volcano

ガブリエル脱退後のトリック・オブ・ザ・テイルより。
さすが名人ナッド、フィル・コリンズの物真似もできるんだね!
ドラムもまあ、凄いのなんのって。というか、フィルコリンズってやっぱり凄いドラマーだよなと、逆説的に再確認。

12.Firth Of Fifth
アルバムが総本山なら、その本尊ともいうべき大名曲。
この曲はやっぱりフルバージョンでないと。
そこでフルートじゃないのかよ!というツッコミは些細なこと。
今まで何度となく聞いたどのファース・オブ・フィフスよりも鳥肌がたって、涙腺崩壊しました。
こんなに素晴らしい曲と、素晴らしいアーティストに出会えたことに心の底から感謝です。ありがたや。

そしてアンコールもなく、ハケットは去って行った。
フェスだからしょうがないけど、もっと見たかったな。

そして最後はキャメル。
中心人物アンディ・ラティマーが重病になり、もはや復帰は不可能と思っていたが、病気から復活。
16年ぶりの来日。僕は初めて見ます。
叙情派シンフォニックのもうひとつの総本山。このバンドが居なければ、僕の大好きな世界中のバンドの半分は居なかったでしょう。

ラティマーが登場すると、会場は大歓声。
みんなが彼の復活を待っていて、そしてみんながそれを喜んでいた。

1.Never Let Go
ファーストの疾走感あふれる代表曲。
イントロが聞こえると、ゾクゾクと鳥肌が。
ああ、ラティマーが目の前にいる。
けして我々はあなたを手放さない。

2.The White Rider
ミラージュより。
1曲目は目の悪い(全盲?)のキーボードの人が歌っていたけど、ラティマーの歌声が入った瞬間に、ああこれだよなあと。
ギターが泣きはじめる。ああこれだよね。

3.Song Within A Song
大好きなムーンマッドネスより。
もうひとつのラティマーの特徴はフルート。
今は亡き、バーデンスの旋律と絡むフルートに感傷的になる。
見上げると満月の月が・・・と思って見上げたけど見えなかった。

4.Unevensong
レインダンスより。
夢見心地。

5.Rhayader
6.Rhayader Goes To Town
スノーグースより。
大御所プログレバンドと比べると後発で、いろいろな無駄なものがそぎ落とされて軽快になって、疾走感と明快さがこのバンドにはある。
場面展開もせわしなくなく、次々と流れるように展開する。いいバンドだねとしみじみ。

7.Spirit Of The Water
おっと、ドラマーまでリコーダー吹かせてる。
歌っているコリンバースの存在感。この人がいると居ないでは、ぜんぜんバンドの重みが違うだろう長年の盟友。
サバ・ハバスとして、インドネシアで大ヒットを飛ばした人物と同一人物だと知ったときは驚いたよ。
あのデンパサールムーン書いた人とは、未だに信じられん。

8.Ice
リモートロマンスより。
後期の名作。永遠に続くともしれないギターソロ。永遠に続いてくれ。
ギターと同時に斜め上を向いて陶酔するラティマーの姿が神々しい。


9.Mother Road
10.Hopeless Anger
91年のダスト・アンド・ドリームより。
うわわ、持ってないよこのアルバム。すぐ買わねば。

11.Long Goodbyes
ステーショナリー・トラベラーより。
80年代キャメルを支え、昨年亡くなったクリス・レインボーにささげた曲。
しっとりと聴かせるが、心のどこかでこれがラティマーとのロンググッバイになりませんようにと。
そしてメンバーが整列して一旦終了。
えっ、まさかこれで終わりじゃないよね?とハラハラと。

12.Lady Fantasy
また出てきてくれて、ほっと一安心。
最後はこの代表曲。うんこれで終わるのがいちばんいい。
ミラージュのバンドを代表する名曲。
そして終幕。
本当によかったありがとうキャメル。終始ニコニコして元気そうだったラティマー。この調子なら、また元気に日本に戻ってきてくれそうだし、新作にも期待してるよ。

そんなんでフェスも終わってしまいました。
キャメルを見たいという夢がまたひとつ叶いました。
チケットを手配してくださった方、誘ってくださった方、久しぶりに再会して変わらず接してくださった方々、その後お付き合いくださった方々、お酒に付き合ってプログレ館に行きランチにお付き合いしてくださった方々、そして何より子供が生まれて間もないのに、快く送り出してくれた出来た妻に感謝です。皆様本当にありがとうございました。
明日からまた頑張ります。

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2016年04月22日

コンピューターブルー

プリンスが亡くなった。
今年はいったいどうなってるんだ。デビッド・ボウイに始まり、イーグルスのグレン・フライ、ビートルズのプロデューサーのジョージ・マーティン、キース・エマーソンに続き、プリンスが。まだ57歳だった。

プリンスへの想いは強い。
音楽的な天才だの、マイケルと人気を二分する人気だの言われるけど、僕自身のイメージはとてもシャイな人という印象。
他人に対して不器用で、音楽を通してでしかファンを含め他人と接することができないナイーブで繊細な人間。
自宅にスタジオを作って、そこで基本的に一人で音楽づくりに没頭する。
彼の音楽の表層はグラマラスで華麗なものが多いけど、どこかすぐ側に居る感覚。大スターだが、とても距離を近くに感じる人だった。

彼の残してくれた作品たちは、彼からの唯一の繋がりであり、そしてとても太いものだった。
大ヒット作の「パープルレイン」、評論家バカ受けの「パレード」、レコード会社とイザコザしていた改名期のどの作品も、とても近しいプリンスがそこに居た。

音楽に生き、一時代を築き、そしてスタジオ兼自宅で逝ったプリンス。ご冥福をお祈りします。

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2016年03月16日

ブラックムーン

すでにニュースを知って衝撃を受け続けているが、キース・エマーソンが亡くなった。
3月10日に自殺をしたという。

エマーソンへの思い入れは深くて、プログレを聴き始めた頃にフロイドやクリムゾンなどとともにELPも聴いたわけだけど、最初に単純に凄い!と思ったのはELPだった。
ギターが花形だったロックに、キーボードを全面に押し出したロックは新鮮だったし、インテリジェンス溢れる旋律と、超絶なテクニックとアイデア、ナイフを鍵盤に突き刺すエキセントリックなライブステージと、魅力が満載だった。
天才肌の芸術性と、天性のエンターティナー。しかし今にして思えば、あれだけ派手にナイフを刺してもオルガンは1台も壊してないし、繊細な一面もあったかもなぁと。
さっき入ってきたニュースによると、最近は神経から来る病気で指が満足に動かないのを悩んでいたそうだ。2014年のインタビューを見ると、あまり演奏には興味がないと強がっているけど、キーボーディストとしては最大の失態と思い悩んでいたと思うと、とてもやるせない。
自殺までしなくても、と周囲は思うだろうが、彼にとってはそこまでの問題だったのだ。

70年代のELPの音楽たちは、僕の宝物。
これからも大切に聴いていきます。

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2016年01月12日

昨日の夕方、衝撃のニュースがはいってきた。デヴィッド・ボウイが亡くなった。
思ったのは「デヴィッド・ボウイって死ぬんだなあ」ということだった。驚異的な傑作群を生み出す音楽的才能、時代にあわてせ変容するファッション的センス、性別を越えてスキャンダラスなプライベートと、もはやバケモノ、いや宇宙人か。そんなモンスターが、1年半の闘病生活の末、ガンで亡くなるのは、符号がどうしてもあわず、未だに信じられない想いだ。
当然ロック好きとしては、ほぼすべての作品を聴いてきていて、特に70年代の次々に変容していく傑作群は凄かったの一言。70年代後期のベルリン3部作は本当によく聴いたし、80年代のチャート狙い路線も、さすがボウイという想いだった。1月8日に出たばかりの最新作の★も、今思えば自らの死を覚悟した遺言的な作品なわけで、儚げな美しさが胸をうつ。
すでに、世界中の著名なミュージシャンが追悼コメントをだし、日本のメディアでも普通に流れたりと、改めて偉大なミュージシャンだったんだなあと実感。RIP。お疲れさまでした。

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2015年12月03日

永遠

PINK FLOYD / THE ENDLESS RIVER (2014)

前作から20年ぶりとなるピンクフロイドの2014年作。
本作の最大のテーマは08年に他界したリック・ライトだろう。元々は20年前の「対」のレコーディングの際の音源を何とか世に出せないものかと思ったギルモアのエゴにある。音源とはいっても要は前作の余り曲。それを丹念に再編集してピンクフロイドらしく仕立て上げた裏方のマンザネラやユースの努力の結晶が本作だ。
音は、よくできたピンクフロイド流ヒーリングミュージックといったところか。最終曲をのぞきすべてインスト曲で、感情の抑揚のあまりない夢見心地の空間。フロイドミュージックの空気を作り出すリックのキーボード、感情のドラマを紡ぐギルモアのギター、40年間変わらず独特のリズムを刻むニックのドラム。そのどれもがピンクフロイドそのものだ。
ただ、「狂気」や「ウォール」「対」といった驚異的な傑作群とは比べようもないクオリティの低さだ。でもそれ以上に、リックの死をきっかけにしたピンクフロイドの最後の作品という事実が、心を感傷的にさせる。遠くの世界にいったシドに成功のプレッシャーのエゴをぶつけ、他人との壁にエゴをぶつけ、政治や親にもエゴをぶつけ、最後はリック追悼というギルモアの自己満足のエゴにつきあわされた。でも結局、そのどれもが、僕を含め世界中の人の心の中で心地よく共鳴していたのだった。50年間お疲れさまでした。ありがとう。

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2015年11月25日

kai ta matia

ELEFTHERIA ARVANITAKI / KAI TA MATIA KAI I KARDIA (2008) ギリシア

アルヴァニタキの08年作。前作より4年ぶり。
傑作だった前作同様、やや民族色を薄めて哀愁のポップスアレンジが光る。エキゾチックなアコースティックギターに絡むアルヴァニタキの声のいつもの展開が中心だけど、ホーンセクションが豪快に絡む3や、お洒落なサルサ風アレンジの6など、耳障りがよくてカッコいい。5の「PES MOU」は代表曲になってるだろうバラード。切々と訴えるように歌い上げるアルヴァニタキ節に聞き惚れる。

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2015年10月29日

9+1

ELEFTHERIA ARVANITAKI / 9+1 ISTORIES (2015) ギリシア

ギリシアのベテラン女性ボーカル、エレフセーリア・アルヴァニタキの最新作。前作から7年ぶりとなる通算13作目。
ギリシアには女性ボーカル物で良作が多いんだけど、その中でも個人的に最も信頼しているのがアルヴァニタキ。57年生まれなので、もう58歳でびっくりだけど、これまでも、そしてこれからも傑作を生み出してくれる安心感がある。
本作も例にもれず傑作。1曲目のギリシアの大御所シンガー、ヴァリシス・パパコンスタティヌとのデュエットが異色だけど、それ以外はいつものアルヴァニタキ節ともいえるもの。アコースティックギターやピアノ、アコーディオンやブズーキなどが奏でる哀愁のギリシア旋律に、独特の透明感のあるアルヴァニタキの声がのると、眼前にはエーゲ海の夕暮れが浮かび上がるのだ。
どの曲も良いんだけど、2〜5の静かにはじまってサビで炸裂するアルヴァニタキ節にニンマリさせられる。9の躍動感のあるビッグバンド風もかっこいい。
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2015年10月20日

桑ブラック

JANA KIRSCHNER / MORUSA(CIERNA) 2014 スロヴァキア

現時点で最新作。当初から二部作になるといっていたMORUSA:BIELAの続編。2014年10月発表。
より深淵になる音世界。前作に比べるとジャズ色が薄まり、電子音や多声コーラスがより多くなり、より現代音楽寄りにシフトしている。そしてヤナのボーカルは表情の域を越えて、冒頭の2曲などではもはや歌うというよりも音の一部になっている。後半になると歌が中心となり、6「ミツバチの背中に乗って」など佳曲が揃う。
アヴァンギャルドなのに、難解さがあまり感じられず聴きやすい。閉塞的密室音楽だが、緊張感もあるし相変わらず凄い。ただ一方で散漫な部分も感じられて、前作セッションでの余り曲ではないのかという気がしないでもない。

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2015年10月18日

JANA KIRSCHNER / MORUSA(BIELA) 2013 スロヴァキア

2013年11月に発表されたスロヴァキアのスーパースター、ヤナ・キルシュネルの7作目。MORUSAとは桑という意味。2014年に発表されるCIERNAとの2部作だ。それまでのロック/ポップスフィールドから脱却して国内外からジャズやクラシック系のミュージシャンを起用して、今までにない音世界を確立した。
聞き手としては当初は確実に困惑する作品だ。賛美歌風の冒頭から現代音楽風、民俗風、ジャズ風と、大衆迎合型のそれまでのスタイルはまったく無く、一度聴いただけでは掴み所が見えない。何度か繰り返して聴くうちに、演奏の密度の濃さ、曲によって変幻自在に声が変わるヤナのボーカルの表現力の深さに引き込まれていく。
9曲の収録曲はどれも粒揃いだが、シングルカットされた4のSamaは出色の出来。実験色の濃い9Vidinaの音楽的深みは底知れない。ヤナの表現力も凄いが、緊張感のあるバックの演奏力も尋常ない。

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2015年10月16日

POOH 解散…

イタリアの国民的ロックバンドにして、僕のフェイヴァリットアーティストのイ・プーが解散を発表した。
来年が結成50周年で、それに向けての旧メンバーを含む記念ライブ等が
記者会見の場で明らかにされたが、同時に解散がアナウンスされた。
衝撃と落胆・・・
旧メンバーのリカルド・フォッリやステファーノを召集するというのは想定の範囲内だったが、まさか解散とは。。
そして50周年記念のコンサートは、今のところ6月の2公演のみ。50周年の来年に、イタリア本国でプーのコンサートに参加するのを考えていたけど、6月じゃ仕事や諸々の関係でとても無理。うむむ。

考えてみれば、センターにたつプーの顔ロビーは70。レッドは心臓手術をしてたりと、この後どこかで今までの活動がストップするのは明白。そして、今までプーのほとんどの楽曲を作詞してきたヴァレリオ・ネグリーニが亡くなって、今までのプーサウンドをキープするのは困難。惜しまれつつ、余力を残して50周年を祝って終わるのが良いのかもしれない。誰かが亡くなって自然消滅っていうのも哀しいし。
兎に角も、決断に至るには、メンバーそれぞれが悩んで葛藤したのは間違いない訳で、ファンとしては寂しいけどそれを尊重するしかない。

今となっては、2012年の奇跡の来日公演に全参加して、直接観られたことが本当に良かった。そして、なんらかの追加公演があることに期待しよう。解散までまだ1年以上あるしね。
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2015年09月02日

シャイン

JANA KIRSCHNER / SHINE (2007) スロヴァキア

スロヴァキアのスーパースター、ヤナ・キルシュネルの5作目。
世界が認める名盤。全曲スロヴァキア語だった前作から一転、すべてが英語詩。ティアーズ・フォー・フィアーズなどを手がけたロス・カラムがプロデュースを手がけて、ワールドワイドな成功を目指したと思われる。
アコースティックギター主体のシンプルな楽曲が並ぶが、バックの演奏の密度の高さ。一音一音が濃厚。そして従来の英語曲で魅せたヤナの美声はさらに磨き抜かれて説得力を増して一分の隙のない音空間だ。
全12曲、「SHINE」、「SOMETIMES」など曲のタイトルがストレートに楽曲を表し、軽快で明快なメロディでとても聞きやすい。「RIVER」の清流のような爽やかな展開が心地よい。
フォークタッチといえるかもしれないが、とてもオシャレな感じ。おそらくヤナのアーティストとしての最絶頂期の名盤。よくできているんだけど、スロヴァキア色が皆無でちと寂しいのは贅沢な悩みだ。

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VECI CO SA DEJU

JANA KIRSCHNER / VECI CO SA DEJU (2003) スロヴァキア

スロヴァキアのスーパースター、ヤナ・キルシュネルの4作目。
傑作揃いの彼女の作品の中でもいちばんのお気に入りだったりする。特徴としては全編スロヴァキア語で歌っているということ。この人は英語曲では癖のない美声になるんだけど、母国語になると途端に泥臭い癖のある声になってしまう。それが本作の雰囲気とよくあっている。南国リゾート然としたジャケット同様、明るく開放的な曲が多くて、楽しく録音されただろう雰囲気が溢れている。7のレゲエっぽさや、10のエキゾチックな中近東旋律も楽しいし、わざと80年代の安っぽさを出した8もいい。
完成度や衝撃度では全作品中でも地味だと思うけど、個人的に辺境ポップスとして申し分のない出来だ。

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2015年08月03日

ペリカン

JANA KIRSCHNER / Pelikan (2002) スロヴァキア

スロヴァキアの国民的スター、ヤナ・キルシュネルの3作目。ペリカーン。
前作までのフレッシュなアコースティック感は後退して、曲やアレンジが緻密な構成になり作り込まれた印象だ。ジャケットの思慮深いヤナの表情がそのまま音になっている。スローからミディアムテンポの曲が多く、明らかに前作とのスタンスを感じる。前作が、ルックス優先の歌手からの脱却を狙ったのだとすれば、本作は前作の空前の成功からの脱却を図ったといえるか。脱却だけでなく、音楽的な懐がぐっと広くなり、よりアーティスティックな方向へ踏み込んでいる。
とはいえ、明快なメロディは健在で数回聴けば口ずさめるほど。歌詞は英語とスロヴァキア語の割合が半分で、3、4、8、9、11の英語曲は相変わらずの美声。スロヴァキア語の曲も地域性は薄まって、ボーカルにエフェクトが掛かっていることが多く夢心地だ。
充実発展の名盤。彼女だけでなく、プロデュースやアレンジの裏方も光る。




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2015年08月02日

ヤナ

JANA KIRSCHNER / V CUDZOM MESTE (1999) スロヴァキア

1978年生まれのスロヴァキアが誇るスーパースター、ヤナ・キルシュネル。1997年のミス・スロヴァキアに選ばれた美貌と、ほとんどの楽曲の作詞作曲をこなす音楽的才能、そしてすべての作品が大ヒットもしくは重要作という才媛。本作は年間ベスト作とベスト女性ボーカルを同時受賞して出世作となった2作目だ。
前半の1〜5は、やや濁声ながら軽快なアコースティックをかき鳴らす女性シンガーソングライターといった印象で、明快なメロディと印象的なサビが心地よい。一転後半はスローバラードが多く、表現力豊かな色っぽい声に聞き惚れる。6「Don't warry」や8「I'm your man」などの英語曲では、濁声がまったく無くなって淀みのない美声になっているのに驚く。
とにかく名曲、名作のオンパレード。後年作と比べると、驚くほどにフレッシュで微笑ましいが、スターとしてのオーラが光っている。ちょっと懐かしいメロディに独特の言語感と辺境ポップスとして理想的な1枚だ。名作。



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2015年07月04日

クリス

時期を逸した話題なんだけど、6月27日にイエスのクリス・スクワイアが亡くなったそうだ。
5月に急性白血病であることを発表して夏のツアー参加を見合わせて治療に専念していたとのことだが、わずか1ヶ月で亡くなってしまった。67歳だった。

僕にとってイエスの存在は大きくて、高校生の頃に聴いた「危機」や「こわれもの」にぶっ飛んで以来、ずっとプログレの世界に浸かったまんま。
集合離散の激しいイエスの中で、デビュー以来ずっと在籍し、すべての作品に参加。気まぐれなメンバーが出て行けば強力なメンバーを召集するなど、音楽的にも、人事的にも間違いなくリーダーであった。
個性の強いメンバーの中でも、けして埋没しない存在感たっぷりのベース。というか、みんなが好き勝手にやっているのを纏め上げていたのがクリスのベースとコーラスであって、なおかつゴリゴリっと存在感を際だたせるのだから、もはや化け物。90年代の奇跡の合体8人イエスで、ギター、キーボード、ドラム、ボーカルが二人づつ居たのに対して、ベースはクリス一人だったのが象徴的。唯一無二のベーシストだった。
ちなみにバンドやってた頃も、クリスのベースはカッコいいとは思ったけどコピーしようとは思わなかった。
「こわれもの」、「危機」、「リレイヤー」、「ドラマ」。膨大なイエスの作品の中でも特にこの4枚が好きだが、そのどの作品にもクリスが輝いている。また一人、好きなミュージシャンが居なくなった。合掌。

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2015年06月19日

HOSTSONATEN / Autumnsymphony (2009) イタリア

ファビオ・ズファンティのソロプロジェクト。四季シリーズの第3弾となる「秋」オータムシンフォニー。
いきなりのジャズで幕を開けるオープニング。秋の夜長に似合う成熟した大人の雰囲気。2の枯れ葉散るアコースティックギターに絡むマッテオ・ナウムの泣きのギターソロ、3のバイオリン、フルート、ピアノの織りなす繊細な美しさ、6のトランペットの響きの郷愁感。終盤の哀しみの女性スキャットは、やがてくる冬(=死)を感じさせてぐっとくる。
曲数は10だが、切れ目がなく曲が展開していく。成熟したラグジュアリーな秋の入り口から季節が流れて、冬のあしあとが忍び寄り、後半はすっかりと晩秋の風景。哀愁ていう字は、哀しい秋の心と書くのだ。
毎度ながら素晴らしい完成度の傑作だ。

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