2006年07月19日

デロリアン

donnadelory.jpg今日の1枚。
DONNA DELORY / Same (1992)

マドンナのツアーメンバー、バックコーラスとして活躍していたいわゆるマドンナファミリーであるドナ・デロリーのデビュー作。

音楽一家に生まれ、子供の頃からキャリアを積み、マドンナの「オープン・ユア・ハート」のデモテープにパトリック・レナードが彼女を起用したのがマドンナとの繋がりのきっかけだ。本作は、パトリック&マドンナが楽曲を提供しているにのみならず、「ライク・ア・ヴァージン」の作者のビリー・スタインバーグ&トム・ケリー、「ラ・イスラ・ボニータ」の作者のブルース・ガイチなど、マドンナを支えたブレーンたちがこぞって参加しているのが大きな特徴だろう。80年代後半から、90年代前半にかけて、女性ボーカル界において頂点を極めた職人たちの仕事は、キャッチーかつセンスがよく本当によくできたものだ。

そして、屈強なブレーンの中にいたドナ・デロリーも当然負けていない。ほとんどの曲の作曲に関わり、アップテンポなダンスナンバーから、スローなバラードまで表現力のある余裕の歌唱をみせる。デビュー作といえども、多くのキャリアがそうさせるのかベテランのような落ち着いた風格さえ感じさせる。典型的な90年代ヒットポップスである全米トップ10ヒットの3はキュートな歌声、熱唱型のバラード4では伸びやかな表情、ハードな5では激情した表情を見せるなど、バラエティに振り分けられた楽曲にあわせて、自在に表現力を変えて歌い上げている。

欠点といえば、マドンナとの類似性だろうか。当代最高の女性シンガーの絶頂期であり、そのブレーンが協力し、しかもドナ自身もその一端を担っていたのだから、きっと本人たちが思う以上にリスナーの方で類似性を感じてしまったり比較してしまう部分があると思う。そのあたりが、うまくヒットチャートに馴染めなかった要因だと思うけど、今の時代から90年代の女性ポップスとして本作を眺めたときに、当時の女性ポップスの良い所が凝縮され、メロディや楽曲の質も申し分のない良質の作品だと思う。

今やブックオフの300円CDの中の掘り出し物。間違っても定価で買ってはいけない1枚だ(涙)

映像みっけ。すぐ終わるけど。
http://www.youtube.com/watch?v=VAgAN7ZYUG8&search=donna%20de%20lory


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2006年04月24日

次ではなく今を

53f74096.jpeg今日の1枚。
なんでヴァネッサ特集になってるんだろう?

VANESSA WILLIAMS / NEXT (1997)

2年半のインターバルをおいて発表された4作目。
前作は、彼女の音楽的な趣味の意向が大きく反映されて、豊かな音楽性で高レベルな作品を作りだしてくれたが、セールスはレコード会社が期待したものには程遠いものだった。そこで以前作の持ち味であったR&B路線に戻し、売れっ子プロデューサーのジャム&ルイスを起用するなどして回生を期した1枚だ。

さすがにこのクラスのアーティストは、プロデューサー陣が豪華だし、演奏も抜群、アレンジも卒はないし、もちろん曲も悪くない。1のファンキーな歌いまわしや、ジャム&ルイスが手がけた2のコンテンポラリーなリズムとセンスのいいアレンジ、3の重心と落としてしっとりとした歌唱、4のサビでの盛り上がりなど、前半の完成度は抜群だ。前作ほど曲調はバラエティではないものの、R&Bの王道ともいうべき曲調に、変幻自在の表現力で歌いあげる歌唱力と、センスのいいアレンジが被さり、お洒落で品がよく、なおかつ奥深い。さすがだ。

ところが、この後が個人的に聴いていて苦しい。5から13の最終曲まで、延々と似たようなスローバラードが続いてしまう。もちろんどの曲も単体で聴くと、メロディアスでサビで盛り上がりのある水準以上のものなんだけど、これだけ同じような曲を並べられると、変化がなく全体で単調なイメージになってしまう。焼肉を食べていて、野菜を食べずに肉ばっかり食べて胃が食傷気味になるイメージだ(どんなたとえだ)。12などは、けっこうドラマチックに盛り上がるんだけど、似たような曲に挟まれて長所が引き立たないような気がする。

結局本作は、前作よりもさらに売れずに、彼女は音楽業界からいったん遠ざかってしまう。
売れることを優先すると、大多数を平均的に満足させる必要があるために、どうしても突出した部分をなくして、結果個性が乏しくなってしまうことがよくある。彼女の場合はウケのいいバラードを前面に押し出したのだろうけど、かえってそれが個性を失わせ、楽曲を息苦しいものにしてしまったように思う。
無難に平均化されて、同じような音楽が溢れかえってしまうようなレコード会社やプロデューサーの意向が強い90年代以降の音楽シーンを苦々しく思っている僕としては、その犠牲の1枚のような気がしてならない。彼女のやりたいようにしてほしかった。惜しい。
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2006年04月22日

彼女は芸術のエラメンタル

d61de190.jpeg今日の1枚。

VANESSA WILLIAMS / THE SWEETEST DAYS (1994)

なぜかヴァネッサ・ウィリアムスだ。

63年ニューヨーク生まれ。83年に黒人として初の「ミス・アメリカ」に選出されるも、雑誌でヌードを出していたことが明るみに出て栄誉は剥奪された。87年に音楽デビュー。数々のヒット曲をもつ実力派シンガーとしての顔の一方で、その美貌を武器に映画、ミュージカル、テレビドラマとマルチに活動する才色兼備のアーティストだ。しばらく音楽界から遠ざかっていたようだけど、近年、カヴァーアルバムや来日公演など再び音楽活動も活発になってきたようだ。

本作は94年に発表された3作目。セールス的には前作がピークで人気に陰りが見え始めてきた時期なんだけど、個人的には気に入っている1枚だ。ジャケットが地味だなあ。

ヴァネッサ・ウィリアムスというと、バラードシンガーというイメージが強い。多くのヒット曲はバラードだし、しっとりとして情感たっぷりに歌い上げられる名曲の数々は、たしかによく出来ている。しかし本作で僕が特に気に入っているのはバラード以外の曲だ。素晴らしいリズム感と圧倒的な歌唱の2、哀愁の溢れるスパニッシュギターがフューチャーされた3、ギターとボーカルのデュエット?の5、クールに展開しお洒落なコーラスとの掛け合いが絶妙な9など、素晴らしい。その中でも白眉は、ジャズ&ヒップホップともいうべき7で、質感の高いダンサンブルなアレンジと水を得た魚のように自在に音の間を泳ぐボーカルに聞き惚れる。そしてその流れをひきつぐ8は、スティングの名曲「シスター・ムーン」のカヴァーで、これまた雰囲気が抜群なジャズバラード。うっとりしていると、聞き覚えのあるコーラスが・・。なんとスティング本人がコーラス参加している豪華なオマケつきだ。

一方、彼女の持ち味のバラード曲は、シングルカットされた4が、いかにも聞き手を感動させてやろうという魂胆がミエミエな点がきになるけど、ラリーカールトンがギターで参加している6やパリのセレブな雰囲気が満ちる10、スローな中に巧みに取り入れるブラジルフレーバーの11、メロディが美しく素直に盛り上がる12など、文句のつけようがない。さらに、ボーナストラックの13はブライアン・マックナイトとのデュエットで「ビバリーヒルズ高校白書」に使われた感動的なバラードで、いったん12で大団円を迎えたあとのアンコールのようなポジションで、再び感動させてくれる。

とにかく高レベル。打ち込みやシンセサイザーが幅を利かせるこの時代のこのテの音楽の中にあって、しっかりとした楽器演奏、特にギターの使い方が、ぐっと作品全体の質感を高めている。ジャズ的な面も申し分なく、スティング好きの人ならスンナリと受け入れられるだろう。そして天性ともいうべき卓越した歌唱力があるのだから無敵だ。セールス的には芳しくなかったようだけど、本物の香りのする名作だと思う。
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2006年03月30日

付き合いが長すぎて新鮮味はないが、気心が知れているような感じ

ふぇいげん新作今日の1枚。

DONALD FAGEN / MORPH THE CAT (2006)

13年ぶりとなるソロ3作目。ソロ3部作の完結編らしく、ナイトフライが若者の視点、カマキリが中年の視点で作られた作品なのに対し、本作は終焉や死をテーマににして作られたそうだ(老いぼれの視点ということか)。

さてレビューを書こうと思うんだけど、特に言葉がみつからない(爆)
ドナルド・フェイゲン〜スティーリーダンを追いかけてきた人間なら、容易に想像がつく音だし、そして当然のごとく期待を裏切らない完成度。ウォルター・ベッカーが関与していないということで、多少屈折したところがないかなというだけで、いつもの音で、いつものお洒落さで、いつものクールさだ。諸手を挙げて感動するわけでも、失望するわけでもない。とにかく高レベル、高クオリティ。好きな人にはたまらないし、苦手な人は苦手なままだろう。

多少ドラムが単調な部分や、ベースラインが素直すぎる面が部分的はあるけど、バッキングキーボードや、ホーンセクションのかぶせ方、計算しつくされたソロ、そして唯一完璧ではないフェイゲンのイガイガ声など、すべて健在だ。録音のよさも相変わらずで再生した瞬間に空気を変えてしまう。

3部作と銘打ったことで、フェイゲン名義のソロはこれで最後になるかもという意見があるんだけど、(根拠はないけど)けしてそんなことはないと思う。スティーリーダンの孤高的な完成度と、フェイゲン名義のパーソナルな雰囲気をもった作品と作り分けていくように思う。ま、なんでもいいか。とにかく一生ついてきます。(なんだそりゃ)
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2006年02月02日

□∨Ε

今日の1枚。

LOVE / FOREVER CHANGES (1968)

先日に行ったロックバーでかかっていて耳にとまったのが本作だった。
早速、「LOVE」というバンド名を頼りにアメリカンロック集成で調べて購入してみた。
おおー、ヾ(~∇~;) コレコレ

サンフランシスコの最古参ロッカーの一人というアーサー・リーが率いるバンド。3作目にあたる本作は、英米では昔から評価が高かったようで、78年の欧米のロックジャーナリストが選んだアルバム200選で16位、93年のNME誌の60年代ベストアルバム50選で6位など、信じられないほど高い評価がなされている。「裏サージェントペパー」あるいは「裏ペットサウンズ」の形容で語られることが多いようだ。僕はまったく知らなかった。
一番の魅力は楽曲のアレンジだと思う。60年代らしいサイケメロディアスな楽曲に、オーケストラがぶわーと入ってきたり、細かい楽器の出し入れなど、かなり作りこまれている。素朴なメロディの面と、ゴージャスな面が共存している。このあたりが、裏サージェントペパーと呼ばれる所以なんだろう。ただ、こういう凝ったアレンジがうまく乗るためには楽曲がしっかりしているのが普通だと思うけど、本作に関しては適度に屈折した展開や強引ともいえる展開が随所に見られる。破綻間際ともいえる楽曲を管弦オーケストラのアレンジ等で隙間を過剰なほどに埋めて繋ぎ合わせているようだ。この危ういバランスが、奇跡的に釣り合ったのが本作ではないだろうか。本人たちでさえ、二度と同じものを作ろうとしても出来ないような作品だと思う。
もちろん随所に美しいメロディやこの時代らしい適度なサイケ色も滲ませている。ドアーズやジミヘンあたりを思い出すメロディやボーカルも感じて、時代の空気感も濃い。色褪せてはいるんだけど、レコードのスクラッチノイズのようなお洒落さを感じる。現代ではけして作りえない時代とシーンの生み出した産物だと思う。
なんかごちゃごちゃ書いたけど、とにかく最初に聴いたときの衝撃は忘れ難い。こんな名盤にまだ出会ってなかったことが、なんだかとても嬉しい。ロックを聴いていてよかったと思った。

Forever Changes
posted by ひろりん at 23:59| Comment(2) | TrackBack(0) | アメリカのロック | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年11月25日

こんなのってはじめての「こんなの」が気になる

今日の1枚。
CAPTAIN AND TENNILLE / SCRAPBOOK

ポップス史上最高の夫婦デュオ。全米トップ10曲を7曲もつなど数々のヒット曲をもつなど輝かしい実績を誇りながらも、最近話題にのぼることもない。今はわからないけど、僕が聴き始めた10年位前にオリジナルアルバムが欲しかったんだけどCD化されていなかった。これもベスト盤だ。
当初は夫婦版カーペンターズというウリで売り出されたようだけど、メロウな歌声でシンプルで明解な曲が多いカーペンターズとは対極の、凝ったアレンジとハスキーな歌声を特徴にしたユニットだ。とにかく「キャプテン」ことダリル・ドラゴンの手腕により複雑なアレンジが素晴らしく、ビーチボーイズ譲りの凝ったコーラスや、斬新なキーボードワークなど、今の耳で聴いてもまったく古ぼけていない。70年代のスティービーワンダーや10CCに匹敵するポップスセンスだと思う。そして、どんな凝った楽曲でも歌いこなしてしまうトニー・テ二ールの変幻自在のボーカルもすごい。また先鋭的なポップスだけでなく、80年に1位になった「愛の証」のような溜息がでるようなメロウなバラードもできるなど、様々な表情で聴き手を楽しませてくれて、奥深い魅力に溢れている。
75年の年間チャート1位になった「愛ある限り」の突き抜けたポップスセンスに僕は今でも転がってしまうんだけど、全米10位「こんなのってはじめて」や4位「ロンリー・ナイト」の凝った仕掛けと先の読めない展開も、このユニットの音楽反射神経のよさが全開だ。それほどのヒット曲ではない「朝のささやき」という曲も、スティービーワンダーのようなリズム感のいいポップスでお気に入り。
ロックにカテゴライズされることはないし、チャートアクションの割りに記憶に残る派手な印象を残したわけでもないので、再評価されることも話題にあがることもなく、リアルタイムではない若者がたどり着きにくい音楽だと思う。スチュワート&ガスキンを知っていて、キャプテン&テニールを知らないって人は意外と多いよ、きっと。もったいない。


Scrapbook
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2005年11月24日

「南から来た男」って、テキサス出身だからか

今日の1枚。
CHRISTOPHER CROSS / Same (1979)

邦題は「南から来た男」。
無名のシンガーソングライターのデビュー作にも関わらず、ドン・ヘンリー、マイケル・マクドナルド、ラリー・カールトンなどの大物がバックアップし、「セイリング」が全米1位、「風たちぬ」が2位とヒットし、80年のグラミー賞の主要4部門を独占してしまった驚異のデビューアルバム。デビュー当時は相当自分の容姿にコンプレックスを持っていたようで、ほとんど顔を見せなかったのは有名な話。たしかに甘く伸びやかなボーカルは、やや小太りで頭が禿げ上がったおっさんのような風貌(失礼っ)からは想像のできないものだ。
爽やかなコーラスのウエストコースト系の音楽と、AORを合体させたような、ソフトでメロウな雰囲気。とても丁寧に作られていて、心穏やかに音に耳を傾けることができる。時代を代表する名曲である8「セイリング」は、波静かな海面に光りがキラキラと揺らめいているようなバラード。もう一つの名曲6「風立ちぬ」は、ぞくぞくするようなイントロに小気味よいリズムが加わり、引き締まった演奏がカッコいい曲だ。マイケル・マクドナルドのコーラスも、存在感たっぷりの色気だ。この2曲だけでも本作を買う価値があるんだけど、カラっと晴れた青空のように爽やかな1や、これまたマクドナルドの名コーラスが味わえるAORの王道的な2、適度な疾走感と上品な盛り上がりを見せる3,4、7など、どこをとっても聞きやすく好印象だ。
本作でもうひとつ僕が気に入っているのは、各楽曲で入るギターソロ。1の華麗なツインギターや、2、7の上品さを失わなずに適度に泣くソロ(ラリー・カールトンかな)、そして9の艶やかなトーンでテクニカルに弾きまわるエリック・ジョンソン(この曲で、一躍世間に名を知られるようになった)のソロと、素晴らしい名演ばかりだと思う。
結局、このデビュー作を超えられないままに失速してしまったんだけど、それだけに本作の価値は大きい。81年のシングル「ニューヨーク・シティ・セレナーデ」とともに、素直にいい音楽だなあ〜と思えるアーティストだ。最近何やってるんだろ。
Christopher Cross
posted by ひろりん at 22:25| Comment(0) | TrackBack(0) | アメリカのロック | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年11月11日

ドキッ、全て男の兄弟バンド。

今日の1枚。
THE ALLMAN BROTHERS BAND AT FILLMORE EAST (1971)

寺巡りのことばかり頭にあった最近なんだけど、当然並行して音楽は聴いているわけで、最近のヘビーローテの1枚がコレ。何を今さらの、ロック界に燦然と輝く名盤ライブ。オールマンズの3作目にして、ニューヨークの伝説のライブハウス、フィルモアイーストでの3月12日・13日のライブ録音盤。
いちばんの聴き所は、もちろん至宝ともいえるデュアンのスライドギター。「スカイドッグ」という異名そのままに、官能的だったりブルージーだったりねちっこい表情を振りまきつつ、音の空間を縦横無尽に駆け巡る。直前のレイラセッションでクラプトンが才能に惚れこんだ気持ちがわかる反面、この数ヵ月後に他界してしまった事実が胸を締め付ける。この人が生きていれば、きっと3大ギタリストなんていう区分けはなかっただろう。
もちろん本作はデュアンのギターだけが凄いのではない。骨太のツインドラム、文字通りしっかりとした低音で楽曲をドライブさせるベース、控えめながら堅実なオルガン、そして奔放なデュアンとはカラーのことなるもう一つのギターのすべてが、高い次元で楽曲に殉じている。音圧感が高いのなんのって。しかもその6人が、元にある楽曲を超えてどこまでつづくともしれないジャムセッションを織り込んでいるのだから、緊張感も尋常ではなく高く、そしてその即興的なフレーズとバッキングがピタリとはまる奇跡のような瞬間が随所に起きている。当然収録曲は長くなり、4は19分、7は23分といった具合。しかし時間がまったく気にならなくなるほど、いろいろなことが起こり、そして引き込まれる。
ロックバンドのライブ盤は数あれど、これだけライブの空気感のある作品にはなかなか出逢えない。テクニックやテクノロジーの洗礼を経た時代の耳から聴くと、本物のロックはコレだ!と思わずにはいられない。名盤中の名盤だと思う。

フィルモア・イースト・ライヴ
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2005年02月24日

プリテンダー

突如復活。今日の1枚。

JACKSON BROWNE / THE PRETENDER (1976)

4作目。スプリングスティーンのジョン・ランドゥがプロデュースを手がけた。レコーディングの終盤に、本作にかかりきりになった彼に対するフラストレーションが積もり、妻が自殺というアクシデントがあったこともあってか、全面を覆う哀しみや自省的な面が滲み出ている。
哀しい雰囲気なんだけど、歌心を感じるメロディアスな曲が多く耳触りがよい。また歌詞を理解しなくても何を伝えたいかがダイレクトに伝わってくるように、ジャクソン・ブラウンを身近に感じることができる気がする。同時代のイーグルスが国を背負ってしまったのに対し、この頃の彼はまだ人間と向かい合っている分だけ密着度が高い。

う〜ん、どうもレビューしづらいなあ。
もっとくだけて書こう。
個人的にはコレは思い出の1枚なのです。
はじめて親元を離れて大学へ行くために神奈川へいく途中の新幹線でこれを聴いてたのでした。
夢と希望で不安を覆い隠して、前だけを向いていたあの頃の自分に、これを聴いていると出会える気がします。
そんなわけで、いつも心にストックされている1枚です。



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2004年12月02日

野薔薇

キル・ビルを見た。
痛快惨殺劇。
最後に出てくる演歌が憎らしいほどに素晴らしいオチだ。
タランティーノは日本の美学をわかりすぎ。

というわけで聴きたくなった今日の1枚。
NICK CAVE AND THE BAD SEEDS / Murder Ballads (1996)

9作目。「殺人者のバラード」というタイトルどおり、殺人をテーマにした1曲ごとに完結するストーリーがエピローグを含め10編収録されたトータル・コンセプトアルバム。
執拗なまでに続く鬼気迫るようなリフレインの中を、低音の図太い声でボソボソと吐き捨てるように歌い語る文芸作品といった趣。妻と娘3人を殺してしまう男や、旅の途中で会った男に殺される女性、バーの中に居た人間を皆殺しにしてしまう男と、殺人者から見た視点で物語が語られる。救いようのない冷酷非道な物語だが、ここまで真剣にやられてしまうと逆にコメディの様相が強くなって、架空の世界の物語を怖いもの見たさで覗いているといった印象だ。横溝ミステリーに出てくる殺人鬼を見ているような感じ。最後に、「死が終わりではないんだよ〜♪」と能天気に歌っているのもどこか可笑しい。
ゲストが豪華で、3はP・J・ハーヴェイ、5はカイリー・ミノーグとのデュエットになっていて、キャラクターにあわせた配役で物語に彩りをそえている。特に素晴らしいのがカイリーとの5で、「美しいものは滅びる運命」と石で頭を砕かれるまでが、二人の視点から語られて、儚い哀しみが満ちた印象深い曲に仕上がっている。
一見、重く暗いんだけど、個性的な登場人物や、衝撃的なシーンなど、明解でインパクトは十分の極上のエンターテイメントになっている。コンセプト音楽の傑作だと思う。ただ、よほど英語力のある人以外は、日本語訳を眺めながら聞き込まないといけないのでシチュエーションを選ぶ音楽だろう。


Murder Ballads
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2004年08月14日

イエツダ・ウルファ

庭でバーべキュー。
アウトドアは似合わないなあ。

今日の1枚。
YEZDA URFA / BORIS (1975) アメリカ

70年代アメリカンプログレの最深淵だろう、イエツダ・ウルファのファーストアルバム。プライベートプレスながら300枚ほどが世に出回り、その特異な音楽性から廃盤コレクターが血眼になって探し回り、オリジナルは最低20万円からとの噂。バンドはなんと近年再始動しており本作の再発を本人たちも望んでいたがマスターテープが行方不明で、FBIを総動員して入手、そして2004年になってようやくCD化実現の運びとなったそうな。本当かいな。
イエス+ジェントル・ジャイアントという世間の評判どおり、テクニカルかつ変拍子の入り乱れるプログレなんだが、心地よいメロディが突如崩れ、まるでダムが決壊したかのように、各楽器が奔流のごとく暴れまわる様に唖然。徐々にテンポアップしくのに、どこまでも偏執的についていくアンサンブル、そして爆発したかと思うと一転して穏やかな表情を見せる。緻密な構成かと思えばフリーになったり、天使の笑顔を見せたかと思うと変質者に一瞬に変貌したりと落ち着かない。奇怪で変態的だが、テンションが高く強引に力でねじ伏せられてしまう怪作だ。音楽的にではないが、イエスやGGを完全に超越してしまっている。
ブックレットに、当時ワーナーやキャピトルなど、大手レコード会社に売り込んでことごとく断られた際の手紙が載せてあるが、この才能を見抜くことができなかった点が惜しいと思う一方で、こんなバンドと契約しないのも無理はないかなと思えるほど個性の強いバンド。怖いもの見たさで聞けば、ぶっとびます。

urfa
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2004年07月27日

やすらぎの季節

カラオケでまたやってしまったのである。
ジャーニーの「オープン・アームス」は気持ちが良かったがマイケルの「ビリー・ジーン」は大失敗だった。

今日の1枚。
DAVID SOUL / Same (1976) アメリカ

1943年シカゴ生まれの俳優兼歌手。70年代のアメリカの超人気番組(視聴率60パーセントを超えたことも)「刑事スタスキー・ハッチ」のハッチ役で知られ、その番組の挿入歌にもなった全米NO1ヒット「やすらぎの季節」を含むデビュー作。
人気のある俳優の余技といった感じだが、もともとはフォークシンガーを目指していたということもあって、声や歌いまわしにも年季の入ったところを感じさせる。基本的には土臭いアコースティックな雰囲気に温かいアレンジといった雰囲気で、メロディのたおやかさや切々と歌う姿に目が細まる。とはいえA2「1927カンサス・シティ」の古きよき時代を感じさせるオールドチックなドラマが展開したり、A5「ハリウッド万歳」のバンジョーやマンドリンを交えてコケティッシュにハリウッド謳歌を決めたりと表情は豊かだ。カントリー系のシンガーによく取りあげられるという歯切れのいいA6や二ール・セダカが提供したB1の安定した魅力を放出するバラードなどが堅実に脇を固めている。
そんな中でやはり出色は、大ヒット曲A3「やすらぎの季節」。静かなピアノのオーケストラが響き渡りメロディアスに展開し徐々に盛り上がる、男の優しさに満ちたアダルトなバラードだ。派手な印象はないがじわじわと良さのわかる、ある意味王道的な名曲バラード。
「スニーカーに拳銃を隠す」ような危険な香りは皆無だが、ビーチサンダルに水鉄砲という感じで聴いているうちに優しい気持ちにさせてくれる作品。毒のなさが欠点だが、本職が俳優ということを考えると健闘していると思う。
040729-222538.jpg
posted by ひろりん at 22:28| Comment(4) | TrackBack(0) | アメリカのロック | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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