
YOUSSOU N'DOUR / THE GUIDE(WOMMAT) (1994) セネガル
先日観た「ライブ8」、そこでダイドさんがユッスーと歌っていた「セブン・セカンズ」に感動した。これがどうしても聞きたくなって、入っているアルバムを探したところ見つけたのが本作。ユッスーさんの作品だった。
1959年、アフリカ北西部のセネガル生まれ。西アフリカのウォロフ語地域に分布する伝統的リズム、ンバラを土台に、キューバ音楽とロックの要素を取り入れて新時代のアフリカンポップスを作り上げ(←解説丸写し)、ワールドミュージックの最も代表的なアーティストの一人だ。ピーター・ガブリエルの「SO」に参加するなど、さまざまな英米のミュージシャンとの交流でも有名だ。本作は94年のソニー時代の作品。この頃は、英語で歌われる世界向け作品と、純アフリカサウンドのセネガル国内向け作品を作り分けることをしていたようで、世界向けである本作は、とてもとっつきやすくてコンテンポラリーな香りのする作品だ。
聞いてみてまず驚くのが、1、2、4、6、7、14などの独特かつ驚異的なリズム感だ。トーキング・ヘッズの「リメイン・イン・ライト」がまったくの子供騙しに思えるほど、複雑怪奇でありながら、体の奥がうずくような沸き立つ情熱。肉感的なのだ。さらにホーンセクションの使い方など、フュージョンテイストも感じられて洗練された趣も感じる。そして、これに個性的で広い声域をもった声が乗る。全曲英語で歌われているが、一般にネイティブの言語以外で歌う場合はどうしても感情がこもらない面が耳につくんだけど、不思議と彼の歌声は説得力があって心に響いてくる。母国語バージョンはもっと凄いと考えると、驚くべき音楽表現者であることが伺えてしまう。多くのミュージシャンの尊敬を集めるのも納得がいく、凄い人なんだと思う。
そして名曲なのが5「セブン・セカンズ」だ。ネナ・チェリーとのデュエット。ややもの哀しいバラード調だが、その奥にあるアフリカの哀しみ。「子供がこの世に生を受けるとき、生まれ持った皮膚の色に先入観は持たない・・」。世界規模の成功でアフリカ音楽を世界に広めた成功者であると同時に、常にアフリカを背負わなくてはならない存在。彼の静かな叫びは、強烈に心を打ち、そして考えさせられる。
彼の作品はほかに聞いたことないし、ほかにグラミーを取った作品もあるとのことだが、名作ではないかと思う。アフリカ音楽のエキゾチックさと、英米のポップスアレンジが難なく融合されてている。そして歌詞を聞き手に伝える表現力も抜群だ。ワールドミュージックという漠然とした枠の中にありながら、世界の第一線に通用する音楽。でありながら、間違いなくアフリカを感じさせる音楽だ。